概要
蜩(拼音:tiáo,広東語:tiu4)は、漢字の一つで、主にセミ(蝉)を指す漢字である。部首は虫(むしへん)に属し、右側に「周」を配した形声字であり、総画数は14画。JIS第2水準漢字、漢検1級に分類される。
字義
「蜩」の基本的な意味は以下の通りである。
- セミ(蝉) — セミ類全般を広く指す語として用いられる。
- ヒグラシ(茅蜩) — セミ科の昆虫の一種で、夕方や明け方に「カナカナ」と特徴的な鳴き声を発する。秋の訪れを感じさせる虫として、日本の文学や俳句において季語としても親しまれている。
音読みと訓読み
- 音読み: チョウ(漢音)
- 訓読み: せみ、ひぐらし
字源と構造
「蜩」は、昆虫に関わる意味を表す意符「虫(むしへん)」と、発音を示す音符「周(シュウ・チョウ)」から構成される形声字である。『説文解字』(許慎)においても「虫部」に収録され、「蝉なり」と解釈されている。
古典文献における用例
「蜩」は中国最古の詩歌集である『詩経』に複数回登場する、歴史の深い漢字である。
- 『詩経(豳風)』:「五月鳴蜩」(五月に蜩が鳴く)— 夏の風物として詠まれている。
- 『詩経(大雅)』:「如蜩如螗」(蜩や螗のように)— 蝉が騒がしく鳴く様子を比喩として用いている。
- 『爾雅』(中国最古の類語辞典)においても「蜩、蜋蜩、螗蜩」と分類され、地域によって呼称が異なる蝉の一群として解説されている。
- 『説文解字』:「蜩、蝉也」(蜩は蝉である)と定義されている。
熟語と用法
- 茅蜩(ひぐらし) — 日本の和語で、蜩の一種を指す。秋の夕暮れ時に鳴くセミとして文学に多く登場する。
- 蜩螗(チョウトウ) — 蝉が騒がしく鳴くように、世の中が騒然として落ち着かない様子を比喻する表現。特に「世事蜩螗」(せじひぐらしのようにさわがしい)という形で用いられる。
- 蜩甲(チョウコウ) — 蝉の抜け殻(蝉蜕)のこと。
日本語における位置づけ
日本語において「蜩」は、特に「ひぐらし」と読む場合に親しまれており、俳句では秋の季語として用いられる。現代では、夏の終わりから秋の初めにかけて鳴くセミを指す一般的な表記としても認識されている。また、1993年には長山洋子が楽曲「蜩」をリリースするなど、文化作品の題名としても用いられている。
関連項目
- 蝉(セミ)
- ひぐらし(茅蜩)
- 蟬(異体字)